小説

ガンパレード・マーチ 5121小隊の日常/榊 涼介

ガンパレード・マーチ 5121小隊の日常 (電撃文庫)ガンパレード・マーチ 5121小隊の日常 (電撃文庫)
榊 涼介

メディアワークス 2001-11
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「弱かった、ということだ。
 しかしたった今、私は強くなることに決めた。お前も決めるが良い。
 皆が我々に期待している」


強烈な主観、そして客観がダイナミックに入り交じるのが、芝村的会話だ。
たとえ、誰も自分達に期待していなくても、「期待している」と決め付ける。
こうして次の行動へと飛躍する。
強くなろうと「思う」のではない強くなることに「決める」のだ。

突如現れた人類の天敵「幻獣」と戦う少年少女たちの物語「ガンパレード・マーチ」の小説版。
ガンパレード・マーチ関連のお話は以前にも何度か読んだが、話の端々に登場する「芝村的」考え方に いつも気が引き締まる思い。
こんな風に強くなりたいなと「思った」矢先、引用のセリフを突きつけられて、強くなろうと「決めた」が、 はたして少しでも変われたのだろうか。芝村にはまだまだ遠いようである。

厳しいながらも楽しげで、華やかさのあるお話ながら、戦時中という、ある意味狂気を孕んだ状況であることを 思い出させられるのは、2話目の「突撃準備よろし」。
当然ながら皆が戦いに前向きであるわけでは無く、逃げ出したいと思う人もいるだろうが、 そんな人に対して、軍という組織はあまりにも冷たい。
士魂号の格好良い立ち回りに心躍らせながらも、裏側にある異常性から目を背けることはできない。

ガンパレード・マーチを題材にした作品は何人もの人が書かれているが、どの作品も 読むたび自分の日常に対して疑問を投げかけられる。
他の作品にも手を出して見たいと思う。・・では無くて手を出そうと「決めた」

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ラプンツェルの翼/土橋 真二郎

ラプンツェルの翼 (電撃文庫)ラプンツェルの翼 (電撃文庫)
土橋 真二郎

アスキーメディアワークス 2009-02
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じゃあ、また一緒に暮らすか?

仕方なく一緒にいてやるんだぞ

・・・・・・いつでも殺せるように、ずっとここにいる
「絶対にあけないでください」と書かれたトランクから出てきた1人の少女。
記憶の無い彼女と奇妙な同居生活をおくるうち、命を懸けたゲームに巻き込まれて・・。

面白かった。前作、前々作同様、今作もゲームを題材としたお話。
このゲームの設定が毎度ながら面白い。限られた情報といくつかの道具を使って目的不明のゲームを攻略するドキドキ感。 徐々に明かされていくゲームの内容にページをめくる手が止まりません。

今回は学校や街中などごく普通の生活エリアが舞台なだけあって、一般の人達の目を気にしながら活動しなければいけないのが、なんとも悩ましいところ。
他のプレイヤーのように自分の身を優先して動くこともできるなか、周りの人の心配や、時には敵の駒にまで気にかける主人公に もどかしく思いながらも共感できるものを感じました。

ゲームもそうですが、今作の見所はなんといっても遼一と奈々の関係ですね。
お互いに自分のために利用すると言いながら、徐々に本当の兄弟のようにその距離感が縮まっていくのが見ていて微笑ましい。
エピローグの全てを知った後の2人のシーンは感動ものでした。
お話としては綺麗に終わっているので続きは無いでしょうが、この2人に会えなくなるのは残念でなりません。

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機巧館のかぞえ唄 名探偵夢水清志郎事件ノート/はやみね かおる

機巧館(からくりやかた)のかぞえ唄―名探偵夢水清志郎事件ノート (講談社文庫) 機巧館(からくりやかた)のかぞえ唄―名探偵夢水清志郎事件ノート (講談社文庫)
はやみね かおる

講談社 2009-01-15
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「わからないかい亜衣ちゃん。ぼくが怖かったのは、夢と現実を、どうやって見分ければいいか、わからないってことなんだ。」
「夢と現実を見分けるって・・・・・・簡単じゃないの」
「本当にそうかい?」
「だって、今は現実でしょ?」
「自身を持って断言できるかい?」

常識ゼロ、生活力ゼロな自称名探偵の「教授」と、亜衣、真衣、美衣の三つ子の姉妹の
関わる事件を描くミステリ作品の第6巻

これは面白い。シリーズでどれか1冊を選ぶならこれと言うくらい好みな作品。

面白いと同時にすごく怖い作品。ホラーという意味ではないのですが、
正体不明な恐怖が背筋を上ってくるようなものを感じます。

友人の寺で”怪談を語る会”を開く「第I部 怪談」、
あるミステリ作家のパーティに招待される「第II部 夢の中の失楽」、
教授の家の庭に現れた赤ちゃんを巡る「第III部 さよなら天使」の3部構成。

皆が話す会談の真相を嬉々として推理して、雰囲気を台無しにするところは、やっぱり教授ですね。
亜衣の内心のツッコミに拍手。

そんな教授の話す「怪談」、そして後日談を読んだときには背中に冷たいものが走りました。
この感覚は、是非読んで感じて欲しいです。

最後の「さよなら天使」は、前の2作品と打って変わってほのぼのな雰囲気。
けれどそれが返って、これは現実なのか、それとも誰かの見ている夢なのかという怖さが
頭の片隅に浮かび上がってきます。

・・・これを書きながら、今は本当に現実なのか心配になってきてしまいます。

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淋しい狩人/宮部 みゆき

淋しい狩人 (新潮文庫) 淋しい狩人 (新潮文庫)
宮部 みゆき

新潮社 1997-01
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ここでは、四角ばって「古書」と称するにふさわしいような本は置いていない。
棚に並べられている商品の大半は娯楽本だ。立派な娯楽本ばかりだ。
小説もあればハウツー本もある。「おえかきのてびき」なんていうものもあれば、童話もある。
ここに古本を買いに来るお客さんたちは、愉しみと夢を求めているのだ。

東京下町、荒川土手下の小さな古書店、田辺書店に関わる事件を描いた短編集。

・結婚式の引き出物に書かれた落書きの謎に迫る・・・六月は名ばかりの月

・亡き父の本棚に残された全く同じ三百冊の本の意味に息子が思いを巡らす・・・黙って逝った

・幽霊が出ると噂される家の買いたい跡から見つかったものとは・・・詫びない年月

・万引きで捕まえた子供の体にはたくさんの痣が・・・うそつき喇叭

・あるOLの考え方を変えた電車の網棚に残された一冊の文庫本・・・歪んだ鏡

・未完の推理小説の内容に沿って起こる連続殺人・・・淋しい狩人


すごく雰囲気の良いお話。

下町の小さな古本屋。たまにご主人と世間話でもしながら古本を物色。
思い浮かべるだけでも幸せになってしまうような光景。こんなお店、近所に欲しいです。

収録された6作の短編は、あらすじだけ聞くと暗いイメージを感じるものが多いのですが、
読み終わるとどこか暖かいイメージを持つのが不思議。

6作品の中で面白いなと思ったのは、2作目の「黙って逝った」。
残された大量の同じ本を見た息子が「父が誰かを脅していたのでは?」と考えるのですが、普通だと悪いイメージを持ちそうなところ、そんな度胸があったことに関心するところがちょっとずれていて面白いです。

また、店主のイワさんと稔の関係が良いですね。高校生くらいになると、両親や祖父母から距離をとりがちなものかと思うんですが、そういった感じではなく、かといってべったりというわけでもなく、良い意味で遠慮が無い。この二人の掛け合いがあるだけでも暖かなものを感じます。

それだけに、稔の恋愛に関わるいざこざで仲違いしてしまったときには、胸が痛みました。
すぐには難しいかもしれないですが、仲直りして欲しいです。

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夏への扉/ロバート・A・ハインライン

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))
福島 正実

早川書房 1979-05
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ともに会社を経営していた親友に裏切られ、失意のまま冷凍睡眠で未来へ向かおうとする主人公。
途中で思いとどまり、かつての親友に一言物申そうと尋ねてゆくが・・・。

良いですね。はじめ謎だった部分が後々の行動で、まるでパズルをはめていくかのように埋まっていく面白さ。時間ものはこうでなくては。

私にとって初の翻訳もの&やや古い作品ということで、多少不安があったのですが、そんな心配も読み進めていくうちに吹っ飛びました。

作中で登場する西暦2000年の世界がなんとも印象的。そこでは、人の命令で働くロボットや触れるだけで自動的にページがめくれる新聞などが使われていて、重力制御なども可能になっています。
現実にはもちろんそんなものは無いのですが、当時の人達の思い描く未来と、今それよりもさらに先の未来に住んでいる事実になんだか不思議な気分になります。

ところで、この作品の紹介には必ずと言って良い程猫が登場するのですが、猫のピートと主人公ダンのかかわりが本当に魅力的。
くっつき過ぎず離れ過ぎず、深い信頼で結びついている様子が伝わってきます。
猫好きとしては、うらやましくなってしまいます。

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黒水村/黒 史郎

黒水村 (一迅社文庫)黒水村 (一迅社文庫)
黒 史郎

一迅社 2008-05-20
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単位の足りない問題児達を更正させるために組まれた農村での課外学習に、小説のネタ探しの為に同行した主人公の少女玲佳。
始めは皆文句をいいながらも普通の課外学習だったが、徐々に不気味な出来事が・・・というお話。

ガスも電気も無い、交通手段もない寒村。これだけでホラーな雰囲気十分。始めの和やかなシーンも、これから起こる悲劇を引き立てるような気がして、何も起きる前から既にドキドキしてしまいました。
そして買出しに行く二人を見送った後、ついに悲劇は幕を開けます。
出かけたまま帰らない人、突然の発作で運ばれていく人、一人、また一人と減っていく仲間。段々と不気味に変わっていく村の雰囲気。
よくありそうな展開ながら想像するとやはり怖いもの。暖かな部屋にいながらゾクリとしてしまいます。

ホラー部分以外では、村の住人と主人公等若者たちの意見の違いについての描写が印象的でした。
伝統やしきたりを守ることが義務だと考える住人と、より住みやすいところに移るのが当然と考える若者たち。
程度は違えど、現実に起こっているであろう意見のすれ違い。
ほどほどに田舎でほどほどに便利な町に住む私には、当事者の気持ちは半分もわかっていないのだろうけれど、少しでも歩み寄れる手は無いものかと無い頭であれこれ考えてしまいます。

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メシアの処方箋/機本 伸司

メシアの処方箋 (ハルキ文庫)メシアの処方箋 (ハルキ文庫)
機本 伸司

角川春樹事務所 2007-05
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前作「神様のパズル」が好みだったので、作者つながりで手に取った作品。
SF作品はなじみが薄く、期待半分不安半分といったところでしたが、良い意味で期待を裏切られました。
特にラスト、全てが終わったあとの主人公が話す「メッセージ」の解釈は鳥肌が立ちました。
こんな作品は久しぶりです。

生命倫理に関わるお話でもありますので、人によってはNGかなというところが心配ではありますが、個人的には大満足。

ヒマラヤの氷河湖決壊で現れた謎の方舟。
その中から大量に見つかった木簡に込められた5千年前という壮大な時を越えて贈られた謎のメッセージ。
これだけでもページをめくる手が進みます。


木簡のメッセージを解読してあらわれる謎のゲノム情報。そのゲノムから生まれるものが未知の存在からのメッセージを伝えるものであるとの期待から、実際にその存在を生み出す計画にお話は進んでいきます。

登場する人物は、行き詰って何かを求めているような人ばかり。平凡で先が見えず、仕事も嫌になっている主人公もその一人。特別なヒーローでは無い等身大のキャラクターになんだかかえって親近感を感じてしまいます。

そんな人達だからこそ、未知の存在からの贈り物である「メシアの処方箋」の救いに一縷の望みをかけたのでしょう。

確かに救いはありました。ただ、皆が想像したのとは全く別な救いですが。


この本を読んだ時、実は少々嫌なことがあって思考が堂々巡りしていたのですが、ラストの主人公の一言で少し冷静になって考えてみることができました。
ようは自分次第なんだということを教えられた気がします。メシアの処方箋、私にもしっかり効いたようです。

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黄昏色の詠使いVIII 百億の星にリリスは祈り/細音 啓

黄昏色の詠使いVIII  百億の星にリリスは祈り (富士見ファンタジア文庫)黄昏色の詠使いVIII 百億の星にリリスは祈り (富士見ファンタジア文庫)
細音 啓

富士見書房 2008-12-20
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今まで多くは語られなかった《ミクヴェクス》、《アマデウス》の謎、シャオやアマリリスの真意等が明かされ、一気にクライマックスに近づいた雰囲気の召喚ファンタジー第8巻。

真実を明かされるネイト、クルーエル、エイダ、レフィスの4人、宿舎に残されたミオ、ヘレン。

おそらくシリーズ中初めて、各々が別行動しているこの巻ですが、皆の「絆」を一番感じた一冊でした。

この巻に限らず主人公ネイト達の通うトレミア・アカデミーのクラスメイト達は皆、見ていて羨ましくなる程にお互いを信じあい、大切にし合っているのを強く感じます。

どんな困難にあたっても、たとえどんなに絶望的な状況でも諦めない強さ。私が同じ状況に立たされたら、果たしてそこまで信じ、進み続けられるのか。そう言い切る自信の無い自分が恥ずかしく思えてきます。

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